X社SIMカードのレンタルサービスを展開する株式会社レグルスは、同社が運営するサービスサイト「フジワイファイ」公式ホームページ及び、PRTIMESでのプレスリリースにて、回線元への抗議状を送達したことを発表しました。
通達日は2021年3月1日付けとなっています。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000050376.html
これにより、フジワイファイだけでなく、X社SIMカードを使用してMVNOサービスを展開する事業者全体に影響が出てくる可能性があります。
【お知らせ】2022年7月1日の改正電気事業通信法施行に伴い、掲載サービスの料金プランが大きく変更されている場合があります。随時修正を行なっておりますが、最新のプランについては公式サイトをご参照くださいますようお願いいたします。
フジワイファイ、X社に対して抗議状を送達
講義に至った経緯について、プレスリリースでは下記の点を挙げています。
- 2021年5月よりデータ通信量の値上げ要請があったがユーザーへ提供しているサービス価格よりも著しく上回る内容だった
- この条件ではサービス維持が困難になることが予想される
- X社の値上げ要請は優先的立場の濫用であり受け入れがたい
値上げによってフジワイファイのサービス維持が困難になることから、顧問弁護士を通じてX社に2021年3月1日付けで抗議文を送達したとのことです。
なお、公式ホームページ上では非常に強い言葉でX社の対応を批判する内容が記載されています。
レグルス会員・FUJIWifiユーザーの皆様へ
平素はFUJI Wifiをご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
2021年2月17日、X社(以下、同社とする)から2021年5月よりデータ通信料の値上げ要請がありました。
これらの価格提示はFUJI WiFiユーザー様への現在のサービス価格を著しく上回る内容となっており、このままでは同条件でのサービス維持は困難となることが予想されます 。同社の弊社に対する要請は、優越的立場の濫用であり、弊社ユーザー様へのサービス維持のためにも到底受け入れがたいものです。
弊社といたしましては、弊社FUJI WiFiサービス継続のため、弊社顧問弁護士より抗議を行っております。
引き続き、同社へ合理性に乏しいと思われる強硬的な値上げへの抗議を続けるとともに、FUJIWifiユーザー様へのご利用環境を継続するため、監督官庁へも申告し、是正を求めて対応していく所存でございます。引用:https://fuji-wifi.jp/post3850 一部改変
X社SIMカードを値上げした背景は
X社SIMカードの卸値を値上げする背景は2つ考えられます。
- 2021年3月17日に開始するLINEMOの帯域確保のため
- 自社データ通信サービスの優位性を保つため
メリハリ無制限・LINEMOの帯域確保および競合サービスをなくすため
ご存知の方も多いかと思いますが、LINE株式会社と経営統合を果たし、X社は2021年3月17日からオンライン専用新ブランド「LINEMO」のサービスインを控えています。
LINEMOは前身の「LINEモバイル」とは異なり、キャリアから提供されるMNOとなるため、使用回線は本体である「SoftBank」と同様となっています。
また、同時に4G/5G回線を用いたパケット無制限サービス「メリハリ無制限」がスタートします。
これにより、X社はメインブランド「SoftBank」とサブブランド「Y!mobile」「LINEMO」の3つで帯域を共有することとなります。
フジワイファイをはじめ各社が提供しているモバイルWiFiルーターやレンタルSIMカードの大半は、キャリア回線がそのまま使える「X社マルチUSIMカード」となっています。
フジワイファイを参考にすると、LINEMOと同様の通信品質と思われる「20ギガプラン」に関しては2,310円(税込)/月で使用可能であり、音声通話サービスこそついていませんが、LINEMOよりも安価となっています。
このほかにも、他事業者が提供しているX社SIMカードを使用した「レンタルサービス」についても、LINEMOよりも安価な価格水準となっています。
今回のメリハリ無制限とLINEMOのリリースにあたり、これらを排除することで
- 自社回線のひっ迫を事前に予防する
- 自社サービスに競合しうるサービスをなくす
という二つのことが可能となります。
自社が卸しているサービスが自社の利益を阻害する可能性があるのであれば、取りうる手段でしょう。
X社データSIMカードとの競合を防ぐため
SoftBankから2021年3月17日に「データ通信専用50GBプラン」がリリースされます。
参考:https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2021/20210218_02/
プラン名 | 内容 | 合計金額 |
---|---|---|
データ通信専用50GBプラン | 基本プラン(データ):1,078円 データプラン50GB(データ通信):4,202円 |
5,280円 |
現在フジワイファイで提供されているプランと比較してみます。
提供元 | 月額費用 | データ単価 |
X社 | 5,280円(税込) | 105.6円/GB |
フジワイファイ | 3,190円(税込) | 63.8円/GB |
このようにフジワイファイの方が(恐らくは同様の回線品質※5Gは使用不可)で約4割ほど安価となっています。
5Gエリアはまだまだ狭く、賢いユーザーであれば同様回線品質であれば安い方を選ぶでしょう。
X社側としては自社サービスよりも安価な自社卸サービスの存在はやはり目の上の瘤となり得ます。
しかも自社が卸している回線が自社メインサービスよりも安価となれば当然「優先的立場の濫用」をしてでもサービス停止に追い込むというのはビジネスを考える上では取りうる選択肢の一つとなると考えます。
フジワイファイだけでなくX社SIMカードを使用したサービス全体に広がる恐れ
この案件で思い出されるのが2020年3月末から発生したどんなときもWIFI(株式会社グッドラック)の大規模通信障害事故です。
総務省の重大通信事故にも認定されたこの通信障害の発端は、グッドラック側にX社SIMカードを仕入れていた兼松コミュニケーションズがX社との折り合いが付かずにSIMカードを仕入れることが困難となり、グッドラック側へ提供できなくなった結果クラウドサーバー上のパケット容量が枯渇して通信ができなくなったというものです。
やはり発端は「X社SIMカードの卸値の変更」でした。
その当時は、新型感染症が蔓延しはじめ、緊急事態宣言が出される間際のことでした。
緊急事態宣言には、企業に対して出社の70%減=テレワークの促進を促す内容が含まれており、自宅に固定回線がない方々は恐らくスマホのテザリングを用いて通信していたことでしょう。
またいわゆる「おうち時間」が長くなることで動画ニーズが増加、結果として当該回線の総トラフィック量が増大していた可能性があります。
このタイミングと値上げのタイミングが一致することから、やはり昨年からX社SIMカードのコントロールを検討していた可能性があります。
それが今回、無制限プランやLINEMOのリリースをきっかけに、X社SIMカードによる自社回線の使用を制限(=卸値の値上げ)する方針になったのではないでしょうか。
そうなってくるとフジワイファイだけでなく、X社SIMカードをすべてのサービスが終了に追い込まれる可能性があります。
当然、当該回線に依存している「クラウドSIMの仕組みを使ったモバイルWiFiルーター」も同様です。
当サイトでも多くのクラウドSIMWiFiルーターを取り扱っていますが、これがすべて終了となると非常に多くの「電波難民」がでることが予想されます。
新生活を前に各社躍起になってユーザー獲得を進めていると思いますが…これに水を差す形にならないことを祈ります。