武田総務大臣の発言にKDDI高橋社長が反論し再度注目される通信料金見直し問題について
GreenWaves管理人です。
本記事は武田総務大臣の発言にKDDI高橋社長が反論し再度注目される通信料金見直し問題についての管理人の私感です。
なるべく回線系総合サイトという体裁もあり、あくまでも中立的な立場からこの問題について言及したいと思います。
武田総務大臣とKDDI高橋社長についての今回の経緯
ことの発端は2020年11月20日に開かれた武田総務大臣の記者会見に始まります。
11月20日|武田総務大臣の記者会見での「羊頭狗肉」発言
Source:2020年11月20日 武田総務大臣閣議後記者会見の概要(総務省)
この会見での質疑応答で記者からKDDIとソフトバンクがサブブランドで値下げをしている一方でメインブランドでの対応をしていない点について見解を求められました。
これについて武田総務大臣が「羊頭狗肉」と痛烈に批判しました。
羊頭狗肉|良品に見せかけたり、宣伝は立派だが、実際には粗悪な品を売るたとえ
続けて下記のように発言されました。
「いろんなプランができましたよ、作りました。あとは利用者の方々次第ですよ」ということも分からんこともないけれども、それではあまりに不親切ではないか。
国民固有の公共の電波を使って、それをベースにしてやっている事業主ならば、コロナ禍の時、そして、特にお年寄りについては、もっと分かりやすい、丁寧なやり方を自ら考えて然るべきだと、我々は考えているわけであります。
11月25日|KDDI高橋社長、日経新聞取材に対して「矛盾している」
この発言に対して、KDDI高橋社長は11月25日に日本経済新聞が行った取材に対して下記のように回答しました。
「すぐには動かない」
「国に携帯料金を決める権利はない」
「矛盾している。主力ブランドで安くしろと言った瞬間に人は(乗り換えに)動かなくなる」
「国は、携帯各社の競争を促進しようと(顧客の)流動性を高める取り組みを求めてきた。いきなり(主力ブランドの料金を)下げろというのは、顧客が動かなくなり、従来の話から逸脱する」
引用:日本経済新聞記事から抜粋
11月27日|武田総務大臣、KDDIコメントに対し「がっかりした」
Source:2020年11月27日 武田総務大臣閣議後記者会見の概要(総務省)
記者の質問はやはりKDDI高橋社長のコメントを受けての武田総務大臣がどう思ったかという部分でした。
武田総務大臣は当該記事を読んだ上で「がっかりした」とコメントした後にこう続けました。
サブブランドにおいて、低廉なプランを用意した。この選択肢の広がりに対して、私は一定の評価をいたしました。
しかし、一向に、ここに皆さんが移ろうとしない。それはなぜなのかを多くの方々から意見を聞いたり調べたりしましたら、そこの間に大きな壁があったんです。
武田総務大臣によると、KDDIが用意したサブブランドの低廉価プランへ移行する際に複雑な手続きと15,500円かかることが乗り換え障壁になっていると指摘、続けてUQmobileからauへ移行するときは0円、しかも35,000円の特典が付く、これでは高い方へ誘導されているのと同じと指摘しました。
加えて、消費者庁とも連携して指導していきたいとの考えも述べられました。
また、現在の大手キャリアの大容量プランが「無用な部分が料金に乗っている」と指摘しました。
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<武田総務大臣によると>
- 全体の42.8%が月間20GB上限以上のプランを利用している
- 実際に月間20GB以上使用している人は11.3%
さらに「国に携帯料金を決める権利はない」というKDDI高橋社長の発言に対しては下記のようにコメントされました。
国が料金を決めるとか決められないというレベルではなくて、公共性の高い事業として、国民に対してどういうサービスを提供しなければいけないのかぐらいは、常識で考えてわかると思うんです。そこのところは、自分の判断で正しい道を歩んでいただきたいと思います。
これを受けて利用者の声
この内容を取り上げたバズプラスニュースでは利用者のKDDI批判を取り上げるとともに痛烈に現行auのプランを批判しました。
やはりauのプランにはちょうどいいものがないという声が多くあることも事実なようです。
総務省は「アクションプラン」を忘れてはいないか
さて、簡単に今回の「炎上騒動」を振り返りました。
なぜ武田総務大臣の「羊頭狗肉発言」に対してKDDI高橋社長があれほどまでのコメントを出したのでしょうか。
ポイントは2020年10月27日に総務省から出された「アクションプラン」です。
引用:総務省
これにはモバイル市場の公正な競争環境の整備に向けての総務省としての様々な指針が規定されており、ソフトバンク。KDDI各社はこれに則る形でサブブランドから20GB/5,000円以内の低廉価格プランを打ち出したという経緯があります。
この中で「事業者間の乗り換えの円滑化」をいう項目では下記を掲げています。
- 行き過ぎた囲い込みの是正(改正法に適合した契約への移行促進)
- 番号持ち運び制度(MNP)の利用環境の整備
- キャリアメールの持ち運びの実現に向けた検討
- SIM ロック解除の推進
- eSIMの促進
- 固定と携帯とのセット割引等の検証
総務省としてはMVNOがある現在においてもキャリアユーザーが多いことを問題視しており市場の流動性を高める=利用者の乗り換えを促進するように仕向けることで市場の価格競争による利用料金の引き下げを画策しています。
MMD研究所が2020年3月に行った調査によると、MVNO利用者は全体の14%にとどまっていることがわかります。
引用:MMD研究所
調査は2020年3月となっているため当時サブブランド化していなかったUQモバイルはMVNOに含まれていることを考えると、キャリア以外の利用者は14%よりもっと少なくなるでしょう。
武田総務大臣の発言はアクションプランに反する可能性
武田総務大臣の言う通り、現在契約しているメインキャリアで値下げをしなければユーザーが恩恵が得られないというのは最もな話でしょう。
特にauユーザーとしては乗り換える手間もなくそのまま安くなるわけですからうれしいでしょう。
そういった立場のユーザーからしてみたら前述のような不満は当然のことながら出てくるのが自然と言えます。
しかし、アクションプランにおいては、キャリア3社の寡占状態が問題で料金が高止まりしていることから、市場流動性=乗り換え促進の方向へもっていきたいという指針のはずです。
KDDI高橋社長が指摘するように、メインブランドで値下げをすることは間違いなく流動性は低下し、ユーザーはそのブランドに居座ることでしょう。
これは高橋社長が批判せずとも、通信界隈に身を置いている人間であればあの時の武田総務大臣の発言はいくら高齢者を含めた利用者の利便性向上を踏まえたとしても「不適切」だったと考える人は少なくないでしょう。
あくまでも批判的な立場なのは「武田総務大臣とキャリアユーザー」だけであって、市場流動性を高めたい政府や総務省としてはむしろ高橋社長側の立場にあることがお分かりいただけたでしょうか。
サブブランドに乗り換えるのに17050円かかるのは本当か
きっとこれは違約金とMNP転出転入手数料のことを言っているのではないでしょうか。
現在、auでは旧プラン(2年縛りプラン)契約時は、更新月の後2か月以内での解約に関しては無料ですが、それ以外の月での解約は10450円の違約金が発生します。
これに加えて他社へ乗り換える際にかかってくる「MNP転出手数料」は3300円、自社ブランドになったUQモバイルへ乗り換える際にも「MNP転入手数料」として3,300円かかります。(それぞれ税抜)
合計すると17,050円となります。
ただし、これは「旧プランでの場合」です。
auでは無料で旧プランから新プランへの切り替えが可能であり、新プランであれば更新月以外の解約でも違約金は1,100円です。
MNP転出転出手数料に関してはどこの携帯電話会社も共通してかかってきます。
強いて言えば、他キャリアやそれに準じた同系列のMVNOの多くは契約期間内での違約金を1000円としているところが多いため、KDDIだからと言って「17000円も」かかるというのは強調して言うには無理があるように思います。
同じ料金がどこでもかかってくる可能性があるのにここぞとばかりにKDDI批判の材料に手数料の話を持ってくるのは残念ながら考えが浅いと言わざるを得ません。
暴走を止めなければMVNOは消滅する可能性も
メインキャリア引き下げでユーザーの流動性が落ちれば市場競争は起きません。
キャリアユーザーはますますキャリアから離れないようになります。
加えて安さを売りとしているMVNOへ流れるユーザーもほとんどいなくなるでしょう。
高橋社長の言葉からはこの長期的視点によるリスクが感じ取れましたが、一方の武田総務大臣の発言からはそれが感じられませんでした。
総務省は流動性を挙げたいのであればメインブランドの料金以外の整備を先に行うべき
武田総務大臣がいうように、乗り換えに複雑な手続きと多大な手数料がかかることが問題と考えているのであれば、まずはそこを制度として整備するのが良いのではないでしょうか。
市場の流動性を阻むボトルネックを外してあげれば、乗り換えも進み、自然と競争原理による値下げが実現する可能性があります。
「お年寄りやわからない人はどうするんだ!」という意見がありそうですが、そこに関しても現在代理店が運営しているショップでの乗り換え支援を国として予算を計上して人員配置を行うことで解決できるのではないでしょうか。
最後に
携帯電話は現代において電気ガス水道といったライフライン同様になくてはならない生活の一部となりました。
しかし、以前ではキャリアの施策におんぶに抱っこ、端末代金が本当はいくらかかっているかすら知らない人もいるでしょう。
iPhoneが10万円以上する高価なものです。
それをキャリアが負担していたという事実も知らない人が多いのではないでしょうか。
生活水準が変わらないのに給料は微減しているのを実感しているのであれば少しでも固定費を減らす工夫をすべきです。
現在では電力やガスが自由化して、利用者に選ぶ権利があります。
思考を放棄していつまでもキャリアに甘えているのは辞めにしませんか。
一人ひとりがもっとお金のことや生活のことを考えれば少しでも生活を楽にしようと携帯電話料金について学ぶ気になる気がするのですが…
そんなことを願いつつ、記事の締めとさせていただきます。
Author:Ryosuke Kawamura(GreenEchoesStudio代表)