総務省、モバイル市場の競争環境整備に向けた「アクションプラン」を発表…その詳細とは
2020年10月27日、総務省はモバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクションプランを発表しました。
引用:総務省
アクションプランでは3つの柱を掲げています。
- 料金・サービスがわかりにくくならないよう利用者の理解を助ける
- 多様で魅力的なサービス
- 乗り換えを手軽に
本記事では「アクションプラン」の内容について解説していきます。
総務省「携帯アクションプラン」について
アクションプランは菅新政権が掲げる「携帯料金の4割値下げ」を実現すべく発表されました。
参考:モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」の公表
これまでに総務省が行ってきた介入としては
- 通信料金と端末代金の完全分離や行き過ぎた囲い込みの禁止など(電気通信事業法の一部改正)
- 縛り期間のあるプランの違約金上限を1000円に(事業法第27条の3)
- SIMロック解除の促進(移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン|総務省)
- NTTドコモと日本通信におけるモバイル音声通話の卸料金の総務大臣裁定実施(総務省)
があります。
通信料金と端末代金の分離が行われ、2万円以上の端末値引きが禁止になったことで端末値引きを主として販促してきたMVNOの加入率が低下、SIMロック解除を進めてきた結果がようやく浸透し始めてきたなど、なかなかうまい具合に政府が進めたい方向にはいっていないように思います。
SIMロック解除についてはようやく2020年10月1日からキャリア3社の足並みがそろったばかりです。
日本通信がMVNOとして初めて通話し放題プランを導入しましたが、LINE通話などのIP電話が普及し始めてきている現在ではその恩恵もどれくらいあるかは不明です。
政府としてはこの3つの施策を行ったことで
モバイル市場において合計で9割近くの契約数シェアを有する MNO(Mobile NetworkOperator)3社2において、改正法の施行に先立ち、「低・中容量」3、「大容量」4ともに期間拘束のあるプランについて3割程度の料金引下げを行った。
第4の MNO である楽天モバイルが、データ契約容量無制限5で月額 2,980 円という低料金で本年4月から本格参入した。
一部の MNO においては、メインブランドよりも低廉なサブブランドを展開するとともに、その後、データ契約容量上限を引き上げるなどの見直しを行った。
としていますが、ユーザーの実感があったかどうかについては個人的には批判的な立場です。
アクションプランでは具体的な取り組みとして
- 分かりやすく納得感のある料金・サービスの実現
- 事業者間の公正な競争の促進
- 事業者間の乗換えの円滑化
の3つを進めていくとしています。
発表資料では難解な点もあるため、必要な情報についてピックアップして解説していきます。
\たった30秒で無料診断/
あなたにぴったりのスマホプランは?
分かりやすく納得感のある料金・サービスの実現
この項目では下記4つについての目標が掲げられています。
- 通信料金と端末代金の完全分離について
- 利用者に誤解を与える表記や販売代理店における不適切な説明の是正
- 消費者利益の一層確保
- 中古端末を含めた端末流通市場の活性化
通信料金と端末代金の完全分離について
ここでは上記改正法に基づいて、引き続きサービス提供元が販売する端末の過度な割引を抑止するとともに、販売店ごとに同じ端末が異なる可能性があることについて周知するとしています。
利用者に誤解を与える表記や販売代理店における不適切な説明の是正
現在の料金表示が「割引後の価格」となっていることを踏まえて、適切な価格表示をすることでユーザーに十分理解可能な表示にするとしています。
消費者利益の一層確保
乗り換えが進むように専門知識がない利用者でも乗り換えができるようわかりやすく解説したポータルサイトを2020年中に作るとしています。
中古端末を含めた端末流通市場の活性化
中古端末のSIMロック解除の促進や中古端末の安心安全な流通を促進するための認証制度の取り組み支援を行うとしています。
事業者間の公正な競争の促進
この項目では下記2つについての目標が掲げられています。
- MNO-MVNO 間での競争環境の整備(接続料・卸料金の低廉化)
- MNO 間での競争環境の整備
MNO-MVNO 間での競争環境の整備(接続料・卸料金の低廉化)
- MVNOがMNOに支払うデータ接続料について3年間で2019年度比5割減を目指す
- ドコモと日本通信の件を踏まえて音声通話料金に関して適正化を図る
- MNOがもつサブブランドが独立系MVNOとの競争環境に与える影響についてデータを取得、検証
MNO 間での競争環境の整備
- 5G普及を踏まえてMNOに割り当てられた電波の有効利用を検証
- 電波塔をシェアできるよう進めていく(インフラシェアリング)
事業者間の乗換えの円滑化
この項目では下記6つについての目標が掲げられています。
- 行き過ぎた囲い込みの是正(改正法に適合した契約への移行促進)
- 番号持ち運び制度(MNP)の利用環境の整備
- キャリアメールの持ち運びの実現に向けた検討
- SIM ロック解除の推進
- eSIMの促進
- 固定と携帯とのセット割引等の検証
行き過ぎた囲い込みの是正(改正法に適合した契約への移行促進)
縛り期間のあるプランでは利用者が自分でプラン変更を行わない限り自動更新となっているため、必要に応じて事業者が何らかの対応をするように求める
番号持ち運び制度(MNP)の利用環境の整備
- 番号そのまま乗り換え(MNP)時のポイント付与などによる引き留めの禁止
- オンライン受付の24時間化
- WEB窓口でのMNP転出手数料の原則無料化
- MNPのワンストップ化が実施できるように整備
※現在「番号そのまま乗り換え=MNP(モバイルナンバーポータビリティ)」はツーストップ方式と呼ばれ、ユーザー自身が契約している携帯電話会社に「転出番号の取得」を行い、乗り換え先携帯電話会社に転出番号を伝える「転入手続き」をする必要があります。
<例>
キャリアメールの持ち運びの実現に向けた検討
キャリアメールを携帯電話会社を解約してもそのままキャリアメールが使えるような仕組みを2020年度内に検討、実施予定としています。
https://greenwaves.jp/news-20201021/
https://greenwaves.jp/put-curse/
SIM ロック解除の推進
- SIMロック解除に関しては一定の条件を満たした場合に端末購入時に解除が可能となっているが、いまだに利用者に周知されていない。
- SIMロックが確実に解除されるための方策について検討
eSIMの促進
通信事業者を端末そのまま乗り換える際に必要になる通信事業者との通信を行うためのチップ=物理SIMカードの差し替えの手間が省けるように「eSIM」と呼ばれる仮想SIMカードの提供ができるように進める
https://greenwaves.jp/iijmio-esim/
固定と携帯とのセット割引等の検証
- キャリアブランドが提供している「○○光」という光回線をセット契約することでスマートフォンの月額料金が割り引かれる「セット割引」が過度な囲い込みになっていないか検証する。
- また、それによる販売代理店のキャッシュバックや販売奨励金等にも調査する。
まとめ
最後にNHKがまとめたアクションプラン概要を引用します。
引用:NHKニュース
このように様々な政府介入が行われる予定となってます。
キャリア3社も(ドコモを除き)民間企業です。
過度な政府介入は逆に競争力の低下にとどまらず、販売代理店減少などのサービス品質低下、加えて収益悪化による次世代通信サービス5Gの整備の遅れなどが懸念されます。
ユーザーにとって携帯電話料金の値下げは嬉しいことですが、通信にかかわっている第三者の立場としては今後の成り行きは不安でなりません。
今後も引き続き通信業界について調査を進めて参ります。