狙っていた? 楽天auローミング終了と KDDI eSIM特化の新MVNO会社設立 から見る”KDDIの策士感”
コラムです。
KDDIは2021年3月末に楽天に貸与している東京都のローミングエリアを終了することを明らかにしました。
すでに2020年10月22日から東京都、大阪府、奈良県の一部エリアで提供を終了しています。
参考:KDDI、楽天モバイルへのローミングを「東京都・大阪府・奈良県」の一部で終了|ケータイWatch KDDI、東京都の楽天ローミングエリアを21年3月末で終了|ケータイWatch
KDDIは楽天モバイルに対して、楽天側が自社基地局の整備が整うまでの間、auの4GLTEネットワークローミングを提供しています。
今後は上記に加えて、都道府県ごとに楽天モバイルエリアの人口カバー率が70%を上回った時点で両者協議のもとauのローミングを終了するとみられます。
楽天モバイルでは
2021年3月までに楽天モバイル自前の基地局での人口カバー率70%、2021年をめどに96%に近付けたいと考えている
とのことです。
また、KDDIは2020年10月30日、eSIMに特化した新MVNOブランド「KDDI Digital Life」を設立、2021年春を目途にサービス開始を目指すと発表しています。
参考:KDDIニュースリリース
→追記:eSIMに特化した新MVNOブランド「KDDI Digital Life」は、ドコモ「ahamo」対抗策として打ち出されたKDDI auの新プラン「povo」として提供される形に変わりました。
東京都のauローミング終了|KDDIの新eSIMサービススタートが完全に一致しています。
もしかして”KDDIは相当の策士なのでは…”という感じがしています。
KDDIは楽天モバイルユーザーの取り込みを考えている可能性があったが状況に変化が
当初、この楽天モバイルに対するローミングサービス終了とeSIM特化したKDDIが運営するはずであった「KDDI Digital Life」の開始時期が一致していましたが、昨今の状況の変化により「povo」として提供されることとなりました。
2020年4月に1年間の無料期間を終えることで「楽天モバイル難民」が大量発生する可能性を考慮し、楽天モバイルは新プラン「UN-LIMIT Ⅵ」を2021年4月1日から開始することを発表しました。
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この新プランは旧プラン「UN-LIMIT Ⅴ」から自動移行されます。
楽天モバイル新料金プランは「~1GB」の使用料だった月に関しては無料としています。
サブ回線目的で契約したユーザーは実質使わなければ無料で回線維持が可能、しかもRakuten Linkアプリからの通話は無料となっているため、解約しなくてもお金がかかりません。
以前はeSIM特化端末「Rakuten mini」の契約をしている「楽天モバイル難民」の流入先がKDDI Digital Lifeとなる見込みでしたが、povoとしてリリースされたためそれは白紙となり、楽天モバイルが2021年4月以降も使わなければ維持費無料を打ち出したため、両者間の利害関係は一致しなくなりました。
KDDI Digital Lifeは「eSIM特化」の新MVNOだったがpovoとしてリリースされた
引用:KDDIニュースリリース
KDDIが設立した新MVNO会社は「eSIMに特化」するとしています。
eSIMの普及については、総務省のアクションプランの中にも盛り込まれており、従来型の物理SIMカードを交換する手間なく、オンライン上で手続き完了→その場で開通が可能となる画期的なサービスです。
執筆時時点ではフルMVNOである「IIJmio」と楽天モバイルが提供しています。
総務省の有識者会議でもキャリアがeSIMの導入について議論されるなど、増えてくる可能性があります。
→追記:eSIMに特化した新MVNOブランド「KDDI Digital Life」は、ドコモ「ahamo」対抗策として打ち出されたKDDI auの新プラン「povo」として提供される形に変わりました。
楽天モバイルの弱点はBand3しかもっていないこと
キャリア各社は複数の周波数を持っており、その役割ごとにつながりやすさを追求しています。
プラチナバンドと呼ばれる700-800MHz周波数帯域は回り込みがしやすいため、建物の中などの遮蔽物でもつながりやすい特徴があります。
また、周波数帯域が高い電波も有しており、直進性が高いため建物の中ではつかみにくい電波ですが、高速通信が可能で屋外などでは快適に通信が可能となっています。
各キャリアの周波数は下記を参照
引用:総務省
ネットワークおよび周波数(LTE) | |
docomo | 必須:Band1/19 補足的:Bans3(東名阪限定) /21/28/42 |
au | 必須:Band1/18/26 補足的:Band11/28/41(WiMAX)/42 |
SoftBank | 必須:Band1/3/8 補足的:Band11/28/41(ソフトバンクエアー)/42 |
楽天モバイル | 必須:Band3(自社回線)/18・26(au回線) |
このように現時点で楽天モバイルはBand3(1.7GHz帯)しかもっていません。
人口カバー率が70%に達し、auローミング終了となった場合、自社回線だけでは「建物の中でつながりにくい」という事態が予想されます。
人口カバー率が上がっても、つながりにくい電波しかないため、もともとキャリアユーザーだった多くの人は「楽天モバイル、つながらないじゃん」と離れていく可能性があります。
実際に圏外となって解約を検討されている方もいらっしゃるようです。
auローミング終了に伴い自宅で楽天モバイルが圏外になりました、半年間ありがとうございました
— マキセン (@makisen48) October 29, 2020
楽天が進めたeSIM対応端末の普及の後釜は?
楽天モバイルが公式サイトで掲載している資料によると楽天モバイルのeSIMが使える端末は下記の通りです。
- Rakuten BIG
- Rakuten Mini
- Google Pixel 4
- Google Pixel 4 XL
- Google Pixel 4a
- iPhone 12 ※1
- iPhone 12 Pro ※1
- iPhone SE(第2世代)※2
- iPhone 11 ※2
- iPhone 11 Pro ※2
- iPhone 11 Pro MAX ※2
- iPhone XS ※3
- iPhone XS Max ※3
- iPhone XR ※3
※1iOS14.1以降
※2iOS13.0以降
※3iOS12.1以降
参考:楽天モバイル
やはり楽天の独自端末はコストパフォーマンスに優れており、RakutenMiniに関しては実質0円で手にしたユーザーも多くいるでしょう。
RakutenMiniは初期ロットと現行ロットで対応周波数が異なって物議を醸したいわくつきの端末です。
RakutenMini現行ロットの対応周波数
■対応周波数帯
FDD-LTEBand 3 (1.8GHz) / Band 4 (1.7GHz) / Band 5 (800MHz) / Band 18 (800MHz) / Band 19 (800MHz) / Band 26 (800MHz) / Band 28 (700MHz APT)
TD-LTEBand 38 (2.6GHz) / Band 41 (2.5GHz)
WCDMABand IV (1.7GHz) / Band V (800MHz) / Band VI (800MHz) / Band XIX (800MHz)
GSM非対応
引用:楽天モバイル
現行ロットではBand1が使えなくなっているため、auの回線で使用は可能ですが、通信速度が比較的速いBand1が使用できず、Band18/26のみで通信することなります。
しかし、もともとの楽天モバイルユーザーで「パートナー回線はつながりやすい」と思っていた方は少なくないはずで、その「auから借りていた回線」こそがBand18/26なのです。
KDDIが設立するはずだった新MVNOがpovoに変更されたため、RakutenMiniユーザーがeSIMで利用できる通信事業者は執筆時時点では楽天モバイルのみとなっています。
やはりKDDIは策士だったがさらにその上を行く
若干執筆時点から状況が変わってきたため加筆修正を行いました。
KDDIと楽天モバイルの間でのauローミング契約がどのようになっていたか、詳細な終了時期まで事前に打ち合わせていたかは不明ですが、あまりにもタイミングよく新会社のサービスをスタートさせることもあり、auローミング終了で行き場を失ったRakutenMini端末を使用する「楽天モバイル難民」のたどり着く先はここになるだろう…と考えていましたが、そうはなりませんでした。
RakutenMiniが使える通信事業者はやはり楽天モバイルのみです。
IIJmioは執筆時時点では音声通話付きeSIMサービスは提供しておらず、あくまでも「データ通信専用プラン」を用意し、iPhoneやPixelを持つキャリアユーザーが安価にパケットを追加購入できる部分で商機を見出しているサービスです。あの手この手で他社動向を見ながら各社様々な仕掛けを仕組んできています。
益々この業界から目が離せません。
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